やや緊張しながらレストランに入ると、数名の黒服スタッフが笑顔で出迎えてくれた。親ビンのあとを追って恐る恐る店の奥へ進むと、4人がけのテーブル席へ案内された。
3人が着席したところで、黒服の先生(あまりにも素晴らしいサービスぶりだったので、ここではあえて先生と呼ばせていただく)のひとりがいう。
「今日はいかがいたしましょうか」
「まずはグラスシャンパンで乾杯だな」
すぐにソムリエの先生がシャンパンのボトルを1本持ってきた。よく見ると、なんとドンペリニヨンではないか!(ヴィンテージは1961年だったような、そうでなかったような・・・)。
「おいおい、俺からぼったくる気か?」
「いえいえ、今日は特別でございます」
そういいながら、ソムリエの先生が目の前で抜栓し、3人のグラスに静かに注いでくれた。これから一体どうなってしまうんだろうと一抹の不安がよぎる。
「かんぱーい! 1年間お疲れ様でしたー!」
振り返れば、親ビンにとって今年は本当に大変な年だった。K編集長も大変だった。もちろんこの赤い彗星も。3人ともよくがんばったなぁ。
それはともかく、
「これ、本物のドンペリなんですから、ビールみたいに飲まないでくださいよ」
と、小声で注意したにも関わらず、K編集長はグビグビと飲み干してしまった(あっちゃー!)。その一方で、親ビンは珍しくゆっくりと味を確かめながら飲んでいた。やっぱりヴィンテージを見て飲んでるんだ。お〜怖っ! 恥ずかしながらこの赤い彗星、シャンパンの味はまったくわからない。
料理はメニューにあるコースではなく、親ビンの好みを熟知しているシェフのお任せらしい。
前菜の盛り合わせから始まって、ふかひれスープ、北京ダック、和牛フィレ肉の炒め物、ドデカイ牡蠣の味噌だれ焼きが2つ、伊勢海老とあわびのピリ辛スープ、五目炒飯、シェリー酒を加えたバニラアイスなど(他にもあったと思うが記憶が定かでない)、絶妙のタイミングで黒服の先生方が運んでくる料理は、この世の物とは思えないような美味。
グルメ番組でタレントがコメントしている場面をよく見かけるが、本当に美味しい物を口にしたとき、人は言葉を失うものであることを初めて知った。
「お飲み物はいかがいたしましょう」
「そうだなぁ。白ワインをもらおうか。ブルゴーニュとボルドーのどっちがいい?」
そんなこと訊かれてもわかるはずがない。それも白ワインなんてあまり飲んだことがない。
「先生にお任せします」
「最近、歳のせいかボルドーよりブルゴーニュの方がイイんだよなぁ」
何の話かサッパリわからない。
結局、ソムリエの先生が持ってきたのは、2000年のムルソー・クロ・ド・ラ・バール/ドメーヌ・デ・コント・ラフォン(Meursault Clos de la Barre/Domaine des Comtes Lafon)。これがまたとても信じられない美味しさ。白ワインのはずなのに金色に輝いている(なんじゃこりゃ?)。そしてとろ〜りとしていてかなり力強い(これはフルボディか?)。あとで調べてみると、17,000円〜24,000円で流通しているらしい。(をいをい!)
「次はいかがいたしましょう」
「う〜ん、この白の後だから難しいなぁ。料理に合わせて赤ワインを」
で、ソムリエの先生が持ってきた赤ワインは、1996年のヴォーヌ・ロマネ/エマニュエル・ルジェ(Vosne Romanee/Emmanuel Rouget)。さすがにソムリエの先生が選んだだけのことはある。味も香りも申し分がなくて本当に素晴らしい。でもムルソーの衝撃があまりにも大きすぎたなぁ。このワインの流通価格も17,000円〜20,000円ほどらしい。(どうしてくれるんだい!)
料理や飲み物だけでなく、店内の雰囲気も黒服の先生方のきめ細やかなサービスも超一流で、これ以上ないという至福のひと時を過ごすことができた。もう死んでもいいと思った。
菊地臣一先生、この度は誠にありがとうございました。この場を借りて、心より厚くお礼申し上げます。m(_ _)m
「今回は20万くらいでしょうかね?」
「どうでしょうねぇ。ヘタをすると30万に手が届いているかもしれませんよ」
次回のホストはK編集長である。今から相当ビビッている。でも、身の丈にあったことしかできませんって。気持ちをわかってもらえるように努めていきましょうや。
この3人の会を『親ビン子ビンの会』と命名したいと思う。親ビンには弟子が100人以上いるわけだから、弟子になどなれるわけがない。だから『親ビン子ビンの会』なのである。誰がハゲチャビンじゃい! (`ヘ´)









