2017年05月24日

根拠に基づく腰痛治療―41―

■【その他の治療】1)グレード1の患者には直ちに通常生活を再開するよう勧めるべきで、ネックスクール・仕事の変更・リラクゼーション法の適応はない。2)グレード2と3の患者にはできるだけ早く通常生活に戻るよう勇気づけるべき。http://1.usa.gov/LYNegq

■3)ネックスクール(頚痛教室)・一時的な仕事の変更・リラクゼーション法・鍼治療は、症状が3週間以上持続しているWAD(むち打ち関連障害)患者の任意的補助手段として認められる。http://1.usa.gov/LYNegq

■4)磁気ネックレス・薬草(漢方薬を含むハーブ療法)・ホメオパシー・リフレクソロジ―(反射療法)などといった話題の治療法が有効だとするエビデンスはなく、特に磁気ネックレスは用いるべきでない。http://1.usa.gov/LYNegq

■慢性腰痛(3ヶ月以上持続)患者63名を対象に腰部椎間関節の変形をCTで調べた結果、痛みを有する患者と無症状の患者との間に有意差が認められなかったことから、CTは腰部椎間関節症の診断法として役立たないことが判明。http://1.usa.gov/RxeS5a

■高性能の画像診断の普及によって1990年代から脊柱管狭窄症が増加したが、100名の脊柱管狭窄症患者(平均年齢59歳)の臨床症状と画像所見(単純X線撮影・脊髄造影・CT)を比較した結果、両者間に関連性は見い出せなかった。http://1.usa.gov/RxEUW4

■慢性疼痛患者558名を対象に痛みと天候との関係について調査した結果、寒い地方の住人だからといって疼痛レベルも疼痛頻度も高いわけではなく、天候が疼痛に影響を与える事実は見い出せなかった。それは単なる思い込みに過ぎない。http://1.usa.gov/PTDMx5

■大部分の家庭医は医学図書館で過ごす時間がほとんどなく、質の高い根拠に基づく研究に触れる機会がない。質の高い研究には多大な努力が注がれているものの、多くの医療従事者は自分の仕事に関する科学的根拠をけっして知ることはない。http://1.usa.gov/RBGneb

■慢性RAでNSAIDsを服用している患者8843名を対象にしたRCTの結果、75歳以上・消化管出血の既往・消化性潰瘍の既往・心疾患の既往が胃腸合併症の危険因子として判明したが、ミソプロストールは合併症を予防できる。http://1.usa.gov/RBKkiX

■プライマリケア医・整形外科医・カイロプラクターを受診した急性腰痛患者を比較した結果、回復率には差がないことが判明。治療費はプライマリケア医が最も安く、満足度はカイロプラクターが最も高く、整形外科医は治療費と満足度の両面に問題あり。http://1.usa.gov/RBOsze

■アスリートにとって腰部椎間板ヘルニアは震え上がるような病気だが長期的予後は驚くほど良好。坐骨神経痛は自然治癒する可能性がきわめて高く、保存療法を行なった患者の38%が1ヶ月以内に回復し、52%が2ヶ月後までに回復する。http://1.usa.gov/Q4de6P

posted by 長谷川 淳史 at 17:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 独り言 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

エビデンス取り扱い上の注意

腰痛治療の新常識』と題して、腰痛を中心に筋骨格系疾患の原因と治療に関するエビデンス(科学的根拠)を不定期で紹介していますが、エビデンスを知ったからといって必ずしもよい医療ができるとは限りません。エビデンスを最優先し(俗にいうエビ固め)、それを患者さんに押し付けるのは暴力行為(ドクターハラスメント)です。

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そもそもEBM(根拠に基づく医療)の定義は、「エビデンス」「患者の状況」「患者の価値観」「治療者の技」を統合することです。したがって、エビデンスは全体の4分の1でしかないということを肝に銘じていただきたいと思います。エビデンスは必要条件であっても、けっして十分条件ではありません。

愚拙がここで『腰痛治療の新常識』を公開する理由は、腰痛にまつわる迷信や神話に振り回されて腰痛難民になってほしくないからです。また、イギリスとアメリカではメディアリテラシーやヘルスリテラシーを育むために「根拠を尋ねよう」と銘打つキャンペーンが始まっていますが、日本でこのようなキャンペーンを実施するのはおそらく不可能だと思うからです。

医学教育の基礎を築いたウイリアム・オスラーの「医療はサイエンスに支えられたアートである」という言葉を忘れないでいただきたいと思います。どちらに傾くこともなく、常にサイエンス(エビデンス)とアート(患者の状況・患者の価値観・治療者の技量)のバランスを考えていただければ幸いです。

posted by 長谷川 淳史 at 08:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 独り言 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

講演会のご案内

7月23日(日)には代々木で、8月20日(日)には品川でアップグレードした『根拠に基づく腰痛治療入門』を開催することになりましたのでご案内いたします。何かの治療を2時間ほど受けると思ってお気軽にお越しください。

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臨床試験で有効性が証明されていないリスク(害)がベネフット(利益)を上回る不適切な医療が横行しているといわれています。現時点で最善の医療を受けられないのは、腰痛患者にとってきわめて不幸な状況といえます。

医療費はもちろん通院費や休職手当まで政府が負担しているヨーロッパやオセアニア諸国では、数年おきに改訂される「腰痛診療ガイドラン」の積極的な導入によって、従来の標準的な治療より治癒率と満足度を上げ、再発率と医療費を低く抑えることに成功しています。

そこでTMSジャパンは、腰痛にまつわる迷信や神話に振り回されている腰痛難民をひとりでも減らすために、世界各国の腰痛診療ガイドラインの勧告に則した腰痛治療セミナー『TMSジャパン・メソッド』を開発しました。

しかし、「腰痛治療セミナーとはどういう内容なのか」「遠くてなかなか行けない」「もっと近くで開催しないのか」「丸一日つぶれるのは困る」といったお問合わせを数多くいただいております。そうしたご要望にお応えするために、『TMSジャパン・メソッド』をコンパクトにした約2時間の講演会を開催することに致しました。

★代々木講演会
【対 象】 腰痛・下肢痛患者ならびに医療関係者
【日 時】 2017年7月23日(日) 14:00〜17:00
【会 場】 東京都渋谷区代々木2−23−1
     ニューステイトメナー 1036号室
【定 員】 先着8名
【受講料】 TMSジャパン会員=6000円 一般=7000円

★品川講演会
【対 象】 腰痛・下肢痛患者ならびに医療関係者
【日 時】 2017年8月20日(日) 14:00〜17:00
【会 場】 東京都港区高輪3−25−33 長田ビル6F
      フクラシア品川高輪口 会議室D
【定 員】 先着30名
【受講料】 TMSジャパン会員=6000円 一般=7000円

詳細は講演会のページをご覧ください。なお、席に限りがございますので、お申し込みはお早めにお願い申し上げます。

また、会場まで来られないという方のために講演会や腰痛治療セミナーを収録したDVDをご用意しております。選択肢のひとつとして考えていただければ幸いでございます。

posted by 長谷川 淳史 at 00:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 独り言 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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