2005年12月17日

レッドフラッグ

腰痛疾患の診断は、詳細な病歴聴取と簡単な理学検査だけで十分である。なぜなら、腰痛疾患の診断でもっとも重要なのはレッドフラッグを見つけ出すことだからだ。それはハイテクを駆使した画像診断装置を使うまでもなく、問診と触診という先人たちが積み上げてきた業績をフルに活用すれば可能である。

科学的根拠はないものの、世界各国すべての腰痛診療ガイドラインが、腰痛疾患を次の3つに分類することで一致している。いわゆる診断用分類(Diagnostic Triage)である(Waddell G,1987)

診断用分類.jpg

まず「重大な脊椎病変の可能性」だが、これがレッドフラッグと呼ばれているもので、悪性腫瘍、脊椎感染症、骨折、解離性大動脈瘤、強直性脊椎炎(膠原病)、馬尾症候群の存在を疑わせる危険信号だ。もしこれらの疾患が存在すれば、もはや腰痛疾患といえるようなものではない。

ノルウェーの診療ガイドラインでは、全腰痛患者の1〜5%にしか認められないとしているが(Acute Low Back Pain Interdisciplinary Clinical Guidelines,2002)、いくら頻度が少ないとはいえレッドフラッグはきわめて重要なサインだ。そこで、各国の腰痛診療ガイドラインを参考に具体例を挙げておこう。

◆発症年齢が20歳未満か55歳超
◆最近の激しい外傷歴(高所からの転落、交通事故など)
◆進行性の絶え間ない痛み(夜間痛、楽な姿勢がない、動作と無関係)
◆胸部痛
◆悪性腫瘍の病歴
◆長期間にわたる副腎皮質ホルモン(ステロイド剤)の使用歴
◆非合法薬物の静脈注射、免疫抑制剤の使用、HIVポジティブ
◆全般的な体調不良
◆原因不明の体重減少
◆腰部の強い屈曲制限の持続
◆脊椎叩打痛
◆身体の変形
◆発熱
◆膀胱直腸障害とサドル麻痺(馬尾症候群の疑い)

このリストに該当するものがひとつでもあれば、必ず重大な疾患が潜んでいるというわけではない。しかし、生命にかかわる危険な疾患を除外するために、画像検査や血液検査を受ける必要があるので、どうか肝に銘じておいてほしい。

たとえば、レッドフラッグを持つ患者の血液検査で赤沈値の亢進がみられれば、悪性腫瘍に罹患している可能性が高い(van den Hoogen HM.et al,1995)。とりわけ膀胱障害(排尿困難、残尿感、尿失禁)、直腸障害(便失禁)、サドル麻痺(肛門や会陰部の感覚消失)といった症状が現れる馬尾症候群は緊急を要する。できるだけ早く整形外科医か外科医の診察を受けなくてはならない。
posted by 長谷川 淳史 at 09:55| 診断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする