急性腰痛か慢性腰痛かを問わず、現在、病歴聴取の診断精度に関する体系的レビューはわずか1件しかない。
それはオランダのヴァン・デン・ホーゲンらが行なった体系的レビューで、腰痛の診断に関する36件の研究から、神経根症状、強直性脊椎炎、悪性腫瘍に対する病歴、理学検査、赤血球沈降速度(赤沈値または血沈値)の診断精度を評価したものである(van den Hoogen HM.et al,1995)。
この体系的レビューには、病歴だけの診断精度を評価した研究が9件含まれており、病歴聴取は神経根症状と強直性脊椎炎に対して感度も特異度も低いこと(レベルB)、そして病歴聴取に赤血球沈降速度を加えると、悪性腫瘍に対する診断精度が相対的に上昇することが判明している(レベルA)。
慢性腰痛における病歴の有用性については、ヨーロッパガイドラインはいかなる勧告も出していない。しかし、腰痛を訴える患者の背骨に変形(脊柱側彎や脊柱後彎)がみられた場合、化膿性椎間板炎(脊椎感染症)が潜んでいる可能性もある。つまり、重大な疾患をいち早く検出して患者に適切な治療を受けさせるためには、感度の高さがより重要になってくるのだ。したがって、病歴と各種検査法を組み合わせた診断精度について、今後さらに研究を推し進めていく必要があると指摘している。