プライマリー・ケアで一般的に行なわれている画像検査は、単純X線撮影、CT(コンピュータ断層撮影)、MRI(磁気共鳴画像撮影)、骨シンチグラフィー(SPECT)で、通常、ミエログラフィー(脊髄造影)、ディスコグラフィー(椎間板造影)、PET(ポジトロン断層撮影)は、専門医が手術前に行なう画像検査なのでここでは検討しない。
単純X線撮影は、低価格ですぐに利用できるもっとも一般的な画像検査である。軟部組織を正確に描き出すことはできないものの、前後像と側面像では椎間板や椎体の高さなど、脊椎構造と骨密度を大まかに評価できる。
斜位像では椎間関節や椎弓を描き出してくれるので、脊椎分離症の診断に有効である。屈曲位像と伸展位像では脊椎の不安定性を評価でき、仙骨の斜位像で仙腸関節の骨癒合が確認されれば強直性脊椎炎と診断できる。
ただし、アメリカの急性腰痛診療ガイドラインでは、X線撮影の斜位像にはまったくといっていいほど臨床的有用性がないので、日常的に行なうべきではないと勧告している(Clinical Practice Guideline No.14;Acute Low Back Problems in Adults ,1994)。

(前後像)

(側面像)

(斜位像)
CT(コンピュータ断層撮影)は、X線を利用して脊椎の横断面(輪切りにした画像)を描き出すもので、軟部組織とのコントラストによって脊柱管や椎間孔を見ることができ、脊椎の画像検査において重要な役割を果たしている。
最近では、ヘリカルCTやマルチスライスヘリカルCTが開発され、画像データを再構成することで横断面だけでなく矢状面(身体を左右に分ける面)や冠状面(身体を前後に分ける面)、さらには立体的な3D画像も描き出せるようになった。

(CT)

(3D画像)
MRI(磁気共鳴画像撮影)は、CTより軟部組織とのコントラストがより鮮明なため、椎間板の髄核と線維輪を区別できるほか、靭帯や脊柱管内を通る脊髄も確認できる。
また、画像を再構成せずに横断面、矢状面、冠状面を直接撮影でき、X線を使用しないので放射線被曝がないなどの利点がある。
ただし、骨の異常は検出できず、費用が高いという欠点がある。
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(L4−L5間後縦靱帯穿破硬膜外脱出型椎間板ヘルニア)
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(3カ月後にはヘルニアが自然消失していた)
骨シンチグラフィー(SPECT)は、テクネチウムというγ線を放つアイソトープ(放射性同位元素)を静脈内注射したのち、全身の骨代謝を画像化することによって、骨折、感染症、がんの骨転移を検出し、骨の退行変化と区別することができる。
また、テクネチウムは骨だけでなく、腎臓、肺、甲状腺、肝臓、脾臓などのシンチグラフィーにも用いられ、その断層撮影をSPECTと呼ぶ。

(骨シンチグラフィー)

(SPECT)