2006年02月03日

医療を変えるのは患者だ

2005年10月27日、NHKの『生活ほっとモーニング』で『健康スペシャル 名医からのメッセージ「ご存知ですか? 腰痛の“新常識”」』が放映された。カナダに本部を置く国際腰椎学会会長の菊地臣一教授が出演されていた番組だ。

「腰痛のもっとも大きな原因は心理的ストレスである」
「椎間板ヘルニアを持っていても痛みのない人はざらにいる」
「症状が出るか出ないかはストレスの有無で決まる」
「ストレスへの対処が腰痛の治療になる」

冒頭から気持ちのイイ言葉が続く。だが中盤からは、世界各国の腰痛診療ガイドラインが禁じている人間工学的アドバイス(正しい物の持ち上げ方など)が出てきた。この点については、会った時に一言いわせてもらおうか。

それはさておき、この番組の中で新鮮に感じた言葉がある。

「安心感を得るためにかりつけの整形外科医を持つこと」

腰痛は風邪と同じようなものなので、気軽に相談できるかかりつけの整形外科医を持ち、ストレスの解消法を教えてもらったり、安心したりすることが大事だというのだ。

逆もまた真なり。実に巧い戦略だ。今までこういう発想をしたことがなかった。

菊地教授はこれまで、医療関係者を対象とした講演で「腰痛概念の劇的な転換」、すなわち腰痛疾患は「生物学的損傷」ではなく「生物・心理・社会的疼痛症候群」であることを力説してきた。しかしながら、治療者側の意識改革は遅々として進んでいない。それは現行の医療システムが障壁となって立ちはだかっているからでもある。

ならば、患者側の意識を先に変えるしかない。

「腰痛の原因はストレスだそうですけど、どうすればいいのでしょう?」

こういって訪れる患者が増えるとどうなるだろう。たしかに、頭から否定して古典的な時代遅れの情報で、患者を恐怖のどん底へ突き落とす治療者もいるだろう。しかし、新しい腰痛概念に興味を示す治療者もポツリポツリと増えてくるのではないだろうか。

メールマガジンでコラムを掲載させていただいている霞ヶ関のマーク・グリーンこと池田正行先生もこう書いておられる。

「患者は医者の教育係である。教育係次第で医者は良くも悪くもなる」

さらにこういった興味深い話も。

「何が医者を変えるかですが、医者ばかりでなく、集団としての人間は(理ではなく)利と外圧(脅迫)でしか動きません。古今東西変わらぬ事実です。たとえば、抗生物質使用の上限金額を決めるとか、MRSA感染を出した病院や医者は片っ端から訴えられるとか、理不尽なことが起こらない限り変わりません。・・・(中略)・・・結局は相手とする患者の方が変わってくれないと医者も変わりません。これは悲観論ではなく、やはり古来よりの厳然たる事実です。・・・(中略)・・・肝心のユーザーである患者の方が、“自分たちは医学に素人なのだから、どのお医者さんがいいのかわからない”なんてのんびりしたことを言っているうちは、日本の医療水準は現在のままに止まると思っています」

そう、医療を変える手っ取り早い方法は、やはり患者教育しかないのだ。

そこで考えたのが、DVDとビデオの値下げとメソッド受講者への無料提供、およびTMSジャパン会員へのパワーポイントのデータ提供である。

コピーを販売してもらっては困るが、DVDやビデオはできるだけ多くの人たちに見てもらいたいし(貸し借りや共同購入おおいに結構)、パワーポイントをお持ちの方は、自由に加工してかまわないので患者さんへの説明に役立てたり、独自の講演会を開催したりしてほしい。その際は、TMSジャパンの掲示板を利用して広く告知してもらえるとなお嬉しい。

最後に、『生活ほっとモーニング』をDVDに焼いて送ってくれたTMSジャパン会員のM・Eさんに、この場を借りてお礼を申し上げたい。本当にありがとうございました。m(_ _)m
posted by 長谷川 淳史 at 07:56| 医療システム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする