2010年09月07日

ホメオパシー騒動に想う

ホメオパシーの治療効果は科学的に明確に否定されています。それを「効果がある」と称して治療に使用することは厳に慎むべき行為です。

日本学術会議会長の金澤一郎先生が8月24日付で発表した談話です。たしかに、「ホメオパシーに頼ることによって、確実で有効な治療を受ける機会を逸する可能性があることが大きな問題であり、時には命にかかわる事態も起こりかねません」というのは事実です。でもそんな高飛車な物言いで大丈夫ですか?

ホメオパシーの効果はプラシーボでしかないというのは昔から分かっていたことで、いまさら話題にするのも恥ずかしいくらいです。でも現代医学が行なっている治療法の中で、その効果が科学的に証明されているのはどれくらいあるというのでしょう。

そもそも現代医学(主流医学・正統医学)と代替医療を明確に線引きすることができるでしょうか。「CAMとは何か」「現代医学とCAMの区別は無意味」「CAMとクワッカリー」で述べているように、愚拙はCAMに対する偏見はほとんどありません(代替医療原理主義、代替医療至上主義は無理)。患者さんが治って満足してくれるのであれば、プラシーボだろうと何だろうと構わないと思っています。臨床現場では祈りたくなることもしばしばですから。

ただしそのメリットとデメリット、費用対効果が許容範囲内であるという条件つきです。

変形性膝関節症に対する関節鏡手術がプラシーボなのはもう周知の事実ですけど、最近、またひとつ興味深い論文が発表されました。強い痛みを訴える(痛みを感じない場合が多い)急性期の骨粗鬆症性脊椎圧迫骨折の治療には、保存療法より経皮的椎体形成術の方が有効かつ安全であるという論文です。

ランダム化比較試験ですから、なるほどそういうものかと思われた方が多いでしょう。ところが、「経皮的椎体形成術」 vs 「保存療法」では前者の勝ちでも、「経皮的椎体形成術」 vs 「シャム経皮的椎体形成術」の治療成績はまったく互角なのをご存知でしたか? まるで奇跡的治癒を目の当たりにしているようだったそうです。

手術という儀式、手術というドラマが効果を引き出すことがあるのです。科学的に証明されていないという理由で代替医療を批判するのなら、同じく科学的に証明されていない現代医学(主流医学・正統医学)の診断と治療を厳に慎んでいただきたい。そうでなければ、弱者を食い物にするクワッカリーと見分けがつかないじゃありませんか。

エビデンスは必要条件ですけど充分条件ではありません。それが真のEBMです(エビデンス大好物だけど)。



posted by 長谷川 淳史 at 00:01| Comment(4) | TrackBack(0) | 独り言 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
通常の医療行為を含めて、治療効果が統計学的に観察されない治療が、健康保険などの対象になるのは疑問です。
Posted by uncorrelated at 2010年09月07日 06:21
まったくです。でもこれが日本の医療制度なんです。このかおかしな医療制度をどう使いこなすかを考えなければなりませんね。
Posted by 長谷川淳史 at 2010年09月07日 07:01
>ホメオパシーの効果はプラシーボでしかないというのは昔から分かっていたことで、

それを分かっていない人もいるから、今回の騒動になっているのではないでしょうか。
Posted by 保成 at 2010年09月07日 08:50
そうですね。言葉が足りませんでした。分かっていない人も大勢います。現代医学も代替医療も含めて言えることですね。
Posted by 長谷川淳史 at 2010年09月07日 10:15
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。