第1目標は、かねてからの悩みの種だった新刊を出すこと。依頼されてからもう3年も経過しているのだから、石にかじりついてでも、岩に爪を立ててでも達成させてみせる。赤い彗星をなめてもらっては困る。通常の3倍のスピードはダテじゃないのだ。
第2目標は、今よりほんの少しだけ健康になる。こういう非具体的な目標はよくないのだが、普通の人よりかなり弱っているのはたしかで、せめて60歳くらいの体力まで戻したい。
以前にも書いたように、遺伝的因子以外に危険因子のない岸見一郎先生が心筋梗塞で倒れた。ステント留置も予想したほどの効果がなく、今年はバイパス手術を行なうことになるだろう。ろくに外出もせず、不眠不休で原稿を書き続けたダメージが大きかったのだ。
実は、この赤い彗星も数年前からちょいとヤバイ。ただちに薬物療法を開始する必要があり、このまま放置すると10年以内に30%以上の確率でアタックに襲われるというエビデンスがある。時限装置が起動してカウントダウンが始まっているというわけだ。
しかし、まだそんな年齢でもないので無視を決め込んでいたのだが、今日、主治医にそれがバレてしまった。
「ダメダメダメ、これはダメ。薬を出しますので直ぐに治療を始めましょう」
「あのう・・・もう少し様子を見るという選択肢はありませんかねぇ。新刊さえ出してしまえば大きなストレスがひとつ減るんですよ。それまで治療開始は待てないでしょうか。あとひとつだけ修羅場を乗り越えれば落ち着くと思うんです」
「その修羅場の真っ只中で倒れたらどうするんですか!」
「わかりました。お手柔らかにお願いします(へいへい、さようでございますか。それでは仰せのとおりに)」
首根っこを捉まれてそこまでバンバン言われると、患者という立場では抵抗できない。覚悟を決めて治療を開始することにした。これからいろんな検査をしていくんだろうけど、できれば時間を浪費したくないなぁ。
てなわけで、今年は少し健康になることになった。これで数年ほど寿命が延びるだろう。ありがたいことである。現代医学の発展に心から感謝したい。