どうしてもヘアスタイルに納得できない赤い彗星は、羽田空港から例のヘアサロンへ直行し、「ジャック・バウアーにしてほしいニャ〜」といってさらに短髪にする。菊地臣一教授と会う時は、髪を切るのはもちろんのこと、シャワーを浴びて身を清めてからと決めているのだ。
例によって約束の30分前に待ち合わせ場所に着いた赤い彗星は、今年初めて見る桜並木を心ゆくまで楽しむことができた。そして約束の10分前にK編集長が現れる。秘書から連絡があって、もしかすると親ビンは5分か10分遅れるかもしれないとのこと。しかし言行一致の親ビンは、3分前にご到着だ。いつものこととはいえ、実に見事な太刀捌きである。
「聞きましたよ。先月のシンポジウムでビシッと締めてきたんですって?」
「いやぁ、あれは反省してるんだ。いつもはあんな言い方はしないんだけど、会議の時間が迫っていたのでついつい早口になってしまった。座長としての役割を果たすためだったとはいえ、深く反省してるよ」
こんな会話から始まった春の陣、反省させられるのはこちらの方だった。今回はビシバシしごかれたのである。
「ジャージはやめろ。普段から服装に気を配れ。俺は帰宅したら和服だぞ」
「ボロは着てても心は錦? それは違う。患者は身だしなみでしか人柄を判断できない」
「配られたカードに文句をいうな。愚痴をいう暇があったら努力しろ」
「努力をしても報われるとは限らない。だが、努力なくして報われることはけっしてない」
「人生の扉は他人が開く。誰かが見ていてくれていると信じろ」
「我々にとっては One of Them でも、患者にとってはOne and Onlyを忘れるな」
「忙しいことを言い訳にするな。忙しい時こそいい仕事ができる」
「汚名は岸壁に刻まれ、美名は砂浜に描かれる」
「高山の巓に美木無し」
「それで、僕の髪型はどうなんですか」
「バカ! 実績で勝負しろ」
厳しさの中にも超一流の優しさを秘めた親ビンの笑顔、なんと後光が射しているではないか。『漢』と書いてオトコと呼ぶにふさわしい人物である。
この他にも実に多くのことを学ばせていただいた。次回はこの赤い彗星がホストなので、束脩はその折にでも。おそれながら居酒屋にて御免つかまつる。m(_ _)m (>_<)
それにしても、とても蕎麦屋とは思えない豪華で美味しい料理だった。K編集長には心からお礼を申し上げる。次回は宮崎地鶏あたりでご勘弁を。(^人^)